わたしが第一子を出産したのは、29歳のとき。妊娠38週3日で陣痛が始まり、その翌日に総合病院の産婦人科で出産しました。陣痛開始から出産するまでにかかった時間は16時間25分。自分では大変な方だろうと思っていましたが、これでも安産だったとか。助産師さんにその事実を告げられたときは少し複雑な気持ちになりましたが、何よりも無事に生まれてきてくれたことにほっとしたのを覚えています。
今回は、そんな初産の流れを紹介。お産の進み方や病院に連絡したタイミング、陣痛の間隔が縮まらないときにやったことなど、当時を細かく振り返っていきます。
必死に駆け抜けた16時間!陣痛が始まってから出産するまでの流れ
まずは、出産前日と当日の動きをざっくり紹介します。
出産前日(妊娠38週3日)
10:00 妊婦検診
15:00 3~15分間隔の不規則な痛みを感じ始める
22:00 3~6分間隔の痛みが続くので病院へ連絡→待機
出産当日(妊娠38週4日)
2:00 痛みが強まってきたので再度病院へ連絡→移動
3:00 病院到着→内診
4:00 LDR室へ移動
7:00 分娩台へ移動
9:00 陣痛が5~6分間隔で停滞(微弱陣痛)
10:00 陣痛を取り戻すために分娩台を降りて運動
11:30 再度分娩台へ移動
12:00 陣痛促進剤を投与
13:00 いきみ解禁
13:20 出産
13:30 産後の処置
14:30 分娩台の上で約2時間安静
17:00 大部屋へ移動
18:30 夕食
19:00 就寝
時間はうろ覚えですが、大体こんな感じでした。
詳しく振り返っていきます。
きっかけは妊婦検診?パパの誕生日に始まった陣痛
妊娠38週3日目。この日は午前中に妊婦検診が入っていました。
正期産に入っているとはいえ、まだ出産予定日の10日以上も前。内診で「もう少しかかりそうだね」と言われたので、その日の夜中に陣痛が始まるなんて想像もしていませんでした。
そして、この日はパパの誕生日。「同じ誕生日にはならなそうだね~」なんて話をしながら、のんきにお祝いの準備をしていたら、ズキン、ズキンと下腹部に軽い生理痛のような痛みが……。とはいえ、臨月に入ってから同じような痛みを感じることがちょこちょこあったので(おそらく前駆陣痛)、そのうち落ち着くだろうと思って最初は気にしていませんでした。
前駆陣痛は夜間に起こることが多かったです。痛みの強さは毎回異なり、軽い生理痛くらいの痛みで済むこともあれば、寝られないほど痛むことも(かなり重い生理痛くらい)。共通していたのは、痛みが増していかないこと。徐々に間隔が伸びたり痛みが遠のいたりして、いつの間にか消えていることがほとんどでした。
しかし、落ち着くどころか痛みはどんどん増していき、夕食を食べる頃(痛みを感じ始めてから約4時間後)には動きが止まるほどの痛さに。念のため、妊娠アプリの陣痛カウンターで時間を計ってみたら3~15分と不規則な間隔。前駆陣痛か本陣痛か分からなかったので、ひとまず病院には連絡せず、引き続き時間を計りながらご飯を食べたりお風呂に入ったりして、普段と同じように過ごしました。
これって本陣痛?前駆陣痛?痛み&不安と戦い続けた4時間
その後も痛みは増していき、22時を過ぎる頃には陣痛の波が来るとじっとしていられないほどに。不規則ではあったものの、3~6分間隔に縮まっていたので、このタイミングで病院に連絡しました。
病院からは陣痛が5~6分間隔になったら連絡するように言われていました。
これまでの前駆陣痛とは比べ物にならない痛みで、かつ陣痛の間隔も縮まっていたので、「これは絶対に本陣痛だ」と確信して電話しましたが、助産師さんからの指示は「待機」。「前駆陣痛の可能性が高いから、もう少し様子見てみようか」と言われ、半泣きで電話を切りました……。
電話中も体の中からぐわ〜っと痛みの波が押し寄せてきて、徐々に落ち着いて、また押し寄せて……の繰り返し。この時点で、すでに痛みレベルは過去最高だったと思います。例えるなら、お腹を下したときの感覚に少し似ていますが、それとも少し違う、今までに経験したことのない痛みでした。
そこからは、ただただ痛みに耐えるのみ。3~6分ごとに痛みが押し寄せるので寝られるはずもなく、1人でひたすら耐え続けました……。
参考にしたのは、YouTubeで見つけたこちらの動画。
横になったり、椅子に座ったり、四つんばいになったり、いろんな体勢を試しましたが、この体勢が1番楽でした。
何よりもつらかったのは、前駆陣痛か本陣痛かわからない宙ぶらりんの状態で痛みに耐えなければならなかったこと。本陣痛なら「出産」というゴールがすぐそこにありますが、前駆陣痛ならこの痛みがいつまで続くのか分かりません。
また、病院までの距離も遠く、車で40分の道のりをタクシーで向かわなければならなかったので、「本陣痛なら早く病院行かないとまずくない……?」という焦りもあり、時間の経過とともにどんどん不安が増していきました。
そして、病院に電話してから約4時間後。陣痛の間隔が縮まるとともに痛みがさらに増し、1人で耐え続けることに限界を感じ始めたタイミングで「おしるし」と思われる出血が見られたので、再度病院へ連絡しました。
おしるしの色は真っ赤で、量は生理4~5日目くらい。トイレットペーパーで拭くと付きますが、ナプキンにはそこまで付着しない感じでした。
助産師さんはまだ前駆陣痛の可能性を否定できない様子でしたが、正直これ以上は1人で耐えられなかったので「とにかくめちゃめちゃ痛いです!」と必死に状況を説明。距離が遠いこともあり、「とりあえず内診してみようか」と、ここでやっと病院へ向かえることになりました。
痛くて寝られない……!椅子の上で過ごした長い夜
定期的に押し寄せる陣痛に耐えながら、なんとかタクシーで病院へ到着。内診とNST(+コロナ禍だったのでPCR検査)をして、そのまま入院が決定しました。
コロナ禍で立ち合い出産ができなかったので、入院が決まったタイミングでパパは帰宅。LINEでお産の経過を報告する予定でしたが、陣痛中はスマホを触る余裕がなく、結局出産報告しかできませんでした。
検査をしたり着替えたりして、LDR室に入ったのが4時頃。深夜だったので「寝られそうだったら少しでも仮眠してね」と声をかけてもらいましたが、痛みで全く寝られず……。それどころか横になるだけでも痛い……!
とにかく体を起こしていないと痛みに耐えられなかったので、椅子に座った状態で一晩過ごしました。
陣痛の波が去ったら、とりあえず目を閉じて休憩することに専念しました。陣痛中は、立ったり座ったりしゃがんだり、とにかく楽な体勢を探し続けましたが、やっぱり1番良かったのは先ほど紹介したYouTubeの体勢。また、動画内でも紹介されていますが、呼吸もかなり重要でした。息を止めてしまうと痛みが増すので、ひたすら深呼吸。息を吐くことに集中して、とにかくゆっくり呼吸しました。
耐えて、耐えて、耐えまくる!なかなか縮まらない陣痛の間隔
病院に着いてからもじわじわ痛みは増していき、夜が明けた頃にはしゃべる余裕すらありませんでした。痛みの波が押し寄せている間は動くこともできないので、分娩台へ上がるのも一苦労。特にNSTを着けている間、ベルトがずれないように体勢を維持しなければならないのが、本当にしんどかったです(たまらず動いてしまい、巻きなおしてもらうことも……)。
陣痛の痛みは、痛みというか、圧迫感というか……。これまでに経験したことのない感覚で言葉にするのが難しいですが、痛みがピークに達したときは、腰から肛門にかけてとてつもない力で無理やりぐ~っと押し広げられるような、体の中から外に出ようとしている巨大なエネルギーをなんとか抑え込んでいるような、そんな感覚でした。
しかし、分娩台へ上がってから約2時間後。それまで順調に来ていた陣痛が5~6分間隔で停滞してしまいました(微弱陣痛)。
そこからは、陣痛を取り戻すためにスクワットをしたり、歩き回ったり、体勢を変えたり。陣痛の波が来たら痛みを逃すことに集中して、波が去ったらとにかく体を動かして、また波が来たら痛みを逃して……の繰り返し。助産師さんがリラックスできるように焚いてくれたアロマの香りが唯一の癒しでした……。
1時間半くらい動いてやっと効果が出始めたのか、痛みが徐々に強くなり、食事も満足に取れない状態に。ただ、陣痛の間隔は縮まらず、分娩台の上で半泣きになりながら痛みに耐え続けました。
朝食は完食できましたが、昼食はほとんど食べられず……。いきみたい感覚にも襲われるようになり、普通に座っている状態ではもう痛みに耐えられませんでした。いきみ逃しに効果的だったのは、テニスボールです。お尻の下に置いて、陣痛が来たら肛門のあたりをぐーっと圧迫するように、自分の体重でテニスボールを押し付けると効果絶大でした。
待ちに待ったいきみ解禁!ついに迎えた出産の瞬間
分娩台に上がってからもしばらく陣痛の間隔は縮まらず(30分くらい)、「もう限界かも……」と心が折れかけたタイミングで、先生から「促進剤入れる?」と一言。一刻も早くこのつらさから解放されたかったので、迷わず承諾しました。
そして、12時頃に陣痛促進剤を投与。
そこからは痛みのレベルが一気に上がった感じで、正直あまり覚えていません。まだ子宮口9cmだったそうですが、自力でいきみを逃すことができず、陣痛が来たら無意識にいきんでしまう状態(4~5回いきんだタイミングで破水して全開に)。周りもバタバタし始めて、あっという間に赤ちゃんを取り出す準備が整えられました。
あとは助産師さんの指示に従うのみ。陣痛の波に合わせていきんだり脱力したり。休む間もなく次の波が来るので、とにかくしんどい……!妊娠中はリラックスして出産に臨める「ソフロロジー法」に挑戦したいと思っていましたが、いきまないなんて無理でした(笑)。早く終わらせたい一心で下半身に全神経を集中し、痛みの波が来たら全力でいきみました。
特に練習はしていませんでしたが、無意識に「ラマーズ法」で呼吸をしていたので自分でも驚きました。最初は陣痛の波といきむタイミングをうまく合わせられず、コツをつかむまでが結構大変だった気がします。
何回繰り返したのか分かりませんが、陣痛の波が来たら無我夢中でいきんで、出なかったらまたいきんで、いつまでたっても終わらない陣痛地獄に絶望しながらさらにいきんで……。後半は必死すぎて周りの声も聞こえず、「力抜いて!力抜いて!」と叫ぶ助産師さんの声でハッとして力を抜いたら、「どゅるんっ」と赤ちゃんが出てくる感覚が……。
こうして、妊娠38週4日目に男の子が誕生しました。
出産直後は何が起こったのか分からず、赤ちゃんの産声を聞きながら、ただただ呆然としていたのを覚えています。1~2分後にやっと理解が追い付きましたが、漫画やドラマのように感動する余裕なんてなく、そのときは痛みから解放された安堵感と達成感でいっぱいでした。
その後すぐに産後の処置が開始。胎盤を出したり、会陰裂傷の縫合をしたり、奥では赤ちゃんのケアが行われていたり。約1時間で全ての処置が終了。母子手帳に記載された分娩所要時間は「16時間25分」でした。
会陰の傷は抜糸の必要がない溶ける糸で縫合。出産の痛みに比べれば大したことありませんが、チクチクと縫われるのも結構痛かったです……。
陣痛・出産の痛みを乗り越えて……赤ちゃんと初対面!
産後の処置が終わった後は、分娩台の上でしばらく待機。この日はシャワーを浴びられないので、まずは助産師さんがきれいに体を拭いてくれました。パジャマにも着替えてすっきりしたら、とりあえず家族に出産を報告。その後は同じ部屋で寝ている赤ちゃんを観察したり、たまに様子を見に来てくれる助産師さんと話したりしながら、ゆっくり過ごしました。
そして、初めて赤ちゃんを抱っこしたのもこのとき。初めての授乳にも挑戦し、慣れない手つきで母乳を与えながら「本当に産まれたんだ」と実感するとともに、腕の中でもぞもぞと動く我が子を見て「さっきまでこの子がお腹の中にいたのか……」と不思議な気持ちになりました。
初めての抱っこを撮影してもらうためにスマホを開いたら、体重計に乗った赤ちゃんの写真が入っていてびっくり!バースプランに「出生直後の赤ちゃんの写真が欲しい」と書いていたので、助産師さんが写真を撮ってくれたそうです。出産に立ち会えなかったパパにも生まれたての姿を見せることができたので、撮影してくれた助産師さんには感謝しかありません……!
約2時間後、歩行確認もかねて産後初めてのトイレへ。骨盤がグラグラする感じに戸惑いつつも歩行は問題なし。大変だったのはトイレです。会陰裂傷が起きた上にその傷を縫っているので、尿を出すのがめちゃめちゃ怖い……!無意識に力を入れてしまうのでなかなか出てこず、扉の向こうで待機してくれている助産師さんに心配されながら、時間をかけてやっと出すことができました。
なんとかトイレを済ませ、自室に行く許可が降りたので、車椅子で大部屋へ移動(赤ちゃんは新生児室へ)。ベッドからは立ち上がらないよう指示されたので、手の届く範囲で荷物を整理し、夕食の時間まで横になって過ごしました。
夕食を食べた後は、疲れ果ててすぐに就寝。眠れないと噂の産後ハイに悩まされることもなく、朝までぐっすりでした。
陣痛はしんどい!でも、必ず終わりが来る!
今まさに出産を控えている方の中には、陣痛そして出産の痛みに対して、不安や恐怖心を抱いている方もいるかもしれません。特に初産の場合は、全てが未知の世界なので、少しでも多く情報を集めようと検索魔になりかけている方もいるのではないでしょうか。
わたし自身、恐怖心を和らげるために、情報収集をしたり呼吸法を練習したりして出産に挑みました。しかし、実際にはほとんど活用できず……。試行錯誤しているうちに、自然と楽な体勢、楽な呼吸にたどり着きました。
もちろん、事前準備をするに越したことはありませんが、ぶっつけ本番でも案外何とかなりますし、すぐそばで助産師さんもサポートしてくれるので、心配しすぎなくて大丈夫です。人によっては長丁場になるかもしれませんが、どんなに辛い陣痛もいつか必ず終わりが来ます。
人生でほんの数回、もしかしたら最初で最後の経験になるかもしれないので、ぜひ楽しむ気持ちで臨んでみてください。